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JSH Research Memo(3):障がい者雇用支援事業は、精神科領域の医療知識等を生かしたサービスで差別化を図る

2024年09月26日 13:03 銘柄/投資戦略

*13:03JST JSH Research Memo(3):障がい者雇用支援事業は、精神科領域の医療知識等を生かしたサービスで差別化を図る ■JSH<150A>の会社概要

2. 事業概要
同社は、「人を通じて、喜びを作り、幸せを作る」を企業理念とし、「地域を問わず全ての人が、心豊かに、能力や個性を発揮できる社会の実現」を目指すゴールとして、在宅医療事業及び地方創生事業を展開している。2024年3月期の事業セグメント別構成比は、地方創生事業が売上高で59.9%、セグメント利益で72.3%と過半を占めており、ここ数年間の収益成長ドライバーとなっている。

(1) 地方創生事業
地方創生事業は、過疎化の進展に伴う人口減少や地場産業の衰退に伴う雇用機会の減少等、地方が直面している課題を解決することを目的とした事業である。売上高の9割以上は障がい者雇用支援事業で占められており、そのほか観光物産事業等も手掛けている。

a) 障がい者雇用支援事業
障がい者雇用支援事業は、自社で開設した農園を企業に貸し出すとともに、農園で就労する障がい者及び管理者(シルバー人材)を紹介するサービスである。利用企業は、同サービスを利用することで安定的な障がい者雇用を実現できるほか、障がい者雇用に係る工数の削減が可能となる。障がい者にとっては就労することで経済的自立が可能となるほか、能力や適性に応じた働き方を通じて生き生きとした生活を過ごすことができるといったメリットがある。2024年6月末の農園数は17農園で利用企業数は179社、1,227人の障がい者雇用を創出している。

農園は屋内型が基本で冷暖房設備やバリアフリー設備を完備しているほか、車椅子にも対応した送迎サポート(自宅付近まで送迎)を行うなど、障がい者が働きやすい環境を整備している。また、看護師(障がい者50人当たり1人)や運営・事務スタッフなど合わせて10人以上の従業員が農園に常駐しており(競合先は数人)、就労する障がい者の障害特性を把握し、特性に応じた「定着支援サポート」を提供していることが特徴であり強みとなっている。

同社は在宅医療事業で蓄積した精神科領域の知見を生かして、ストレス緩和のための救護室や相談対応スペースの設置、婦人科系疾患への対応などを行っている。こうした取り組みにより障がい者の職場定着率は75%と民間企業の平均値を27ポイントとする上回っており、利用企業からの高い評価並びにリピート受注につながっている。直近12ヶ月間の平均解約率※は0.15%(2024年6月時点)と低水準で推移している。

※ 解約率=直近12ヶ月の解約によるMRR(月次経常収益)減少額の合計値÷13ヶ月前から前月のMRRの合計値で算出。


就労する障がい者は、精神障がいが約5割で残りを身体障がいと知的障がいで二分している。栽培品目はリーフレタスが中心で、収穫物については約5割を同社が買い取り、地場のスーパーや自社で運営しているECサイト「地場くる」で、ほぼ仕入原価に近い水準で販売している。残りは利用企業が社員食堂等で利用しているほか、子ども食堂や児童養護施設へ寄付している。

同事業のビジネスモデルとしては、障がい者就労が可能な農園(30~150名程度)を開設し、水耕栽培設備を構築、障がい者3人(1区画1人)+管理者1人(主にシルバー人材)を1チームとして、利用企業からスポット売上となる人材紹介料(4人で約200万円)、月額で継続的に発生するリカーリング売上を徴収している。リカーリング売上は障がい者1人当たりの定着支援サポート料13万円、農園利用料1万円、水耕栽培設備レンタル料1万円の合計15万円となる。同事業の売上高の約90%はリカーリング売上で占められることから、安定性の高いビジネスモデルとなっている。

農園を活用した障がい者雇用支援で最大手のエスプール<2471>は栽培設備を利用企業に販売しているほか、就労者の欠員が生じた場合、補充人員の紹介料を徴収しているが、同社は栽培設備をレンタルで提供し、補充人員についても紹介料を不要としている点が大きく異なり、月額利用料金についてはほぼ同水準と見られる。

また、同社は農園を九州圏など地方で展開しているのに対して、エスプールは首都圏や大阪、愛知など大都市圏で展開している。エスプールでは、利用企業の担当者が定期的に農園を訪問し就労状況等を確認する必要があるため本社に近い場所で農園を展開しているが、同社のサービスでは企業の担当者が農園に足を運ぶ必要がないため、全国の企業が顧客対象となる。

同社が地方で農園を開設する最大の目的は、地方における障がい者の求人数が少なく、就労率が大都市圏と比較して低水準にとどまっているという課題を解決することにある。同社の調べでは、障がい者の就労率は東京都で79%に達しているのに対して、九州では11~16%と極めて低い水準にとどまっており、他の地方エリアでも同様の傾向にある。地方で障がい者の求人が少ないのは、企業の障がい者法定雇用率達成割合が高いためだ。実際、2023年の一般企業の法定雇用率達成割合は全国平均で50.1%となっているが、都道府県別では東京都が34.4%と最も低く、地方は総じて60%前後の水準である。このため、障がい者雇用ニーズのある都市部の企業に対して、地方の障がい者を紹介する同社のサービスは、障がい者雇用の地域間格差を解消するための打ってつけのサービスと言え、2018年のサービス開始以降、同事業が順調に成長している要因ともなっている。

なお、1農園当たりの設備投資額は40~100百万円と大都市圏で開設するよりも少額で抑えられるほか、地代家賃も低い。ただ、現場の常駐スタッフが同業他社と比べて多いため、人件費を含めた固定費はやや高くなるが、それでも売上総利益率は40%台の水準となっている。また、利用企業に紹介する障がい者については、各地域の就労支援施設からの紹介や、ポスティング・折込チラシ広告などで募集、登録後に適正を確認するための体験作業を農園で行い、その後本人の就労意思を確認してから企業に紹介するといった流れとなる。今のところ、需要に供給が追い付かないといった状況にはなっていないようだ。

b) 観光物産事業ほか
観光物産事業では主に旅行代理店事業と民泊事業を長崎県の五島事業所で行っており、主に五島市在住者の旅行需要や五島市への旅行需要などを取り込んでいる。また、物販事業としてECサイト「地場くる」を運営しており、農園を運営している各地域の地場産品等を販売している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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