nms Research Memo(5):2024年3月期予想は、売上高は主要顧客の生産調整の影響見込み
*15:35JST nms Research Memo(5):2024年3月期予想は、売上高は主要顧客の生産調整の影響見込み
■今後の見通し
1. 2024年3月期通期の業績見通し
2024年3月期通期の連結業績予想について、nmsホールディングス<2162>は2023年10月30日に修正を発表した。売上高が77,000百万円(前期比2.6%減)、営業利益が1,850百万円(同20.3%増)、経常利益が1,500百万円(同5.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が800百万円(同58.3%増)としている。売上高は、主にEMS事業における主要顧客の生産調整の影響のほか、HS事業における製造請負や派遣ビジネスにおける積極的な新規受注獲得と在籍人員の拡大をねらうビジネスモデル過渡期に伴い売上が減少する見込みによるものである。利益面では、第3四半期以降もEMS事業における顧客の在庫調整影響は継続する可能性があるが、上期でも順調な進捗が確認できたPS事業における収益性改善の取り組みの成果が期待されることに加え、HS事業においても新規受注獲得と在籍人数の増加を見込む。経常利益は為替差益の発生などにより増益が見込まれ、各利益はそれぞれ会社計画に沿った順調な進捗となる見通しである。
2. 事業別業績概況
(1) HS事業
需要は2024年3月期にかけても高水準での推移を見込む。顧客ニーズに合わせた多様なサービス・人材の提案・提供、製造業の海外進出・製造支援サービス事業の拡大、デジタルプラットフォームの構築・展開を主眼に据え、事業規模拡大を引き続き推進する。事業環境の変化に対応する形で、グループ内製造受託インフラ・ノウハウを顧客ニーズに合わせて提案・提供するほか、製造業のファブレス化に即応するため顧客シニアエキスパート人材の転籍支援にも注力し、幅広い人材の雇用機会を創出することで採用枠の拡大・生産性の向上をさらに推し進める。人材教育・育成は、エンジニア採用・育成プログラムの強化やジョブグレードアップ制度の高度化と効果の可視化を行い、得られた実績をほかの地域にも展開していく。製造業の海外進出・製造支援サービス事業については、住友商事<8053>と業務提携を行っているベトナム・タンロン工業団地での需要が引き続き好調に推移することが想定され、ワンストップサービスの提供に注力する。利益面に関しても、既存取引における原価率の改善や販管費の管理強化などの基盤強化策を継続する。
(2) EMS事業
EMS事業は、中国やマレーシア拠点における客先在庫調整の影響により、売上高は期初想定よりも減少する見通しである。一方、同社はベトナム拠点とメキシコ拠点での各種活動に注力する方針である。2021年6月に新規品生産立ち上げを開始したベトナム拠点では、ベトナムへ生産移管を進める日系企業のニーズに合わせてプレス技術を核に完成品まで生産できる特長を生かし、車載用ワイヤレス充電器関連やAV・音響機器関連などの対応を進める。ベトナムはチャイナプラスワンとして重要性が高まっており、需要が好調に推移することが見込まれる。メキシコ拠点では、主軸の車載関連部品に加えて、北米において大きなマーケットを有する家電や電動工具、産業機器などの顧客にフォーカスし事業を推進する。このほか、利益確保に向けて基盤強化策による収益性の向上に引き続き取り組んでいく。戦略投資による量産立ち上げも順調に進行しており、堅調なニーズがしっかりと業績に取り込まれていくことが期待される。
同事業は戦略投資の実行期にあり、新市場としての北中米事業の立ち上げ、ニーズが高まっているベトナムでの新規量産立ち上げなどに投資を行っている。2022年3月期、2023年3月期はコロナ禍の影響を受けたものの北中米・ベトナム市場の重要性は普遍のものと同社は考えており、今後も北中米とベトナム市場へ注力する方針である。
(3) PS事業
PS事業においても需要が高水準で推移することが想定され、高圧電源、マグネットロールを中心に引き続き安定した収益体質への転換を図る。また、産業機器市場への製品展開、新規顧客の獲得・拡販にも引き続き注力する方針だ。さらに省人化・自動化ニーズによるロボティクス市場の拡大や、環境変化に対応した殺菌・滅菌機器市場への製品展開など、新市場の開拓も推進する。ロボティクス市場や産業機器市場への展開は確実に進捗しており、さらなる新市場の開拓が期待される。利益面に関しても、各種施策を実行することで収益確保に注力する。加えて、部材の調達ソースを拡大することによって、生産活動の安定化も進める計画だ。同事業では、2024年3月期以降も利益を積み上げていく想定だ。戦略投資や基盤強化策の着実な実行によって、足元では収益性が高まっている状況である。2025年3月期以降も売上高の大幅な拡大は見込んでいないが、収益性改善への取り組みにより着実に利益を積み上げ、今後数年間の同社の利益成長における新たなドライバーとなる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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