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Iスペース Research Memo(6):2024年9月期は成長事業への先行投資を実施

2024年01月10日 14:56 銘柄/投資戦略

*14:56JST Iスペース Research Memo(6):2024年9月期は成長事業への先行投資を実施 ■今後の見通し

1. 2024年9月期の業績見通し
インタースペース<2122>の2024年9月期の連結業績は取扱高で前期比5.4%増の27,300百万円、売上高で同5.7%増の7,700百万円、営業利益で同33.1%減の530百万円、経常利益で同37.3%減の570百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同45.4%減の320百万円と増収減益を見込んでいる。中長期的に事業を大きく拡大するため、成長事業への先行投資を実施することが要因だ。事業方針としては、「比較・検討型メディアへの投資推進」「海外アフィリエイトへの投資と収益モデルの展開」「マーケティングソリューション分野への投資とアフィリエイトの生産性向上」の3点をテーマに掲げ目標達成を目指す。

売上総利益は前期比3.3%増の6,134百万円となり、売上総利益率は79.7%と前期の81.5%から低下する見通しである。これは「ママスタ」の収益を通期では前期並みの水準で見込んでいることに加え、マーケティングソリューションサービスや海外アフィリエイト事業、比較・検討型メディアなど投資事業の売上拡大に注力するため、販売ミックスの悪化を想定していることが要因と見られる。販管費は前期比8.9%の増加を見込む。内訳としては、パフォーマンスマーケティング事業で242百万円の増加、メディア事業で182百万円の増加、その他で33百万円の増加を計画している。パフォーマンスマーケティング事業※では、自社コンテンツ(スマートフォン向けセキュリティ商品「ダレカナブロック」、「賢瓦」等)の会員獲得に向けたプロモーション費用を投下していくほか、海外子会社で積極的に人材投資を行う予定だ。一方、メディア事業では比較・検討型メディアの集客力を強化するため、コンテンツ内容を拡充するために必要となる人材投資を実施する。これら先行投資を実施することで増収減益となるが、半期ベースで見ると前期下期を底にして売上高、営業利益ともに上向き、2024年9月期下期には売上高で前年同期比11.2%増の3,900百万円、営業利益で同24.4%増の280百万円と2ケタ増収増益に転じる計画となっている。

※2024年9月期よりインターネット広告事業の名称を現在の事業内容に照らし合わせ、パフォーマンスマーケティング事業へと改称した。


(1) パフォーマンスマーケティング事業
パフォーマンスマーケティング事業は売上高で前期比5%増程度の増収を見込む。主力の国内アフィリエイト広告については、人材派遣を中心にサービス分野が堅調に推移するほか、低迷が続いているEC分野においてもロングテールの売上が期待できる顧客を開拓することで増収を目指す。従来は1件当たりの顧客獲得で成果報酬を得る広告案件が多かったが、流通総額に比例して成果報酬が得られるような広告主を開拓していく。例えば、ファッション・雑貨など多品種を扱っているEC運営会社などが該当する。また、金融分野については不動産投資のクラウドファンディング運営会社などは開拓余地があると見ている。

マーケティングソリューション分野では、「ポケットバックアップ」に続く自社商材としてスマートフォン向けセキュリティ商品「ダレカナブロック」(月額495円(税込)※)を2023年10月より提供開始した。迷惑電話やフィッシング詐欺の可能性があるショートメッセージを自動識別してブロックする機能を持ち、高齢者などにニーズがあると見ている。2023年12月より北九州でテレビCMを開始するなど認知度向上に向けたプロモーションを実施し、契約件数を伸ばしていく考えだ。初年度の目標として5万件を目指している。広告費を投下するため利益貢献は早くても2025年9月期以降となるが、ストック型ビジネスであるため中長期的に安定収益源に育つものと期待される。

※iOSアプリ内課金は500円(税込)


また、Webサイト改善ツール「賢瓦」については、インターネット広告代理店にニーズがあると見て、Webプロモーションを中心に展開する。2024年9月期は顧客獲得コストが先行するため赤字見通しだが、競合と比較して価格優位性は高いため、認知度を高めて顧客数を拡大することで早期の収益化を目指す。

海外アフィリエイト事業に関しては、人材の採用と育成、収益モデルの共通化、ノウハウの蓄積を進めることで、投資と成長の好循環を創り出し、年率2ケタ成長を目指す。人材については質の高い人材に照準を定めて、積極的な採用と育成を行う予定だ。また、提携パートナーの拡大や広告主の開拓も高成長を実現するためには重要であり、注力する。なお、国内アフィリエイト広告に関しては売上を伸ばしつつ、コスト構造の見直しを継続し、生産性向上に取り組む方針である。

トピックスとして、2023年11月にコンテンツ制作サービスやAIマーケティングツール(SEO分析ツール、生成AIを活用したエディタ、特許取得済みのテキスト類似判定ツール等)を提供しているCROCO(株)に出資を行い、資本業務提携を締結したことを発表した。両社の強みを持ちより、アフィリエイト事業における同社ネットワークのSEOメディアへの取り組み強化と技術改善、さらなる成長を図ることを目的としたものだ。具体的な取り組みとして、定期的なSEO情報提供セミナーの共催や、最新AI技術を用いたサービスの開発、顧客向け新商品・サービスの共同企画と開発、顧客の相互紹介などを行っていく予定だ。また、同社の提携パートナーがCROCOのサービスを利用することで、コンバージョンレートが向上すれば、間接的に同社のアフィリエイト広告事業の収益増につながる効果も期待できる。

(2) メディア事業
メディア事業の売上高は前期比5%以上の増収を見込んでいる。「ママスタ」については下落したアドネットワーク広告単価について、徐々に回復することを想定している。UU数については1,300万UUで安定推移が見込まれるため、あとはコンテンツの内容を充実させるべく企画・制作・編集に注力しPV数を伸ばすほか、単価の高い動画広告を増やすことで、収益回復を目指す。少子化対策として国や企業の子育て支援制度が拡充されるなか、関連ビジネスに関する広告需要は堅調に推移すると見られる。子育てママ向けメディアとしての地位を確立している「ママスタ」に関しては、こうした需要を取り込むことで収益を回復していく可能性は十分にあると弊社では見ている。

一方、投資事業と位置付けている比較・検討型メディアについては、SEO施策とコンテンツ拡充によるユーザーオリエンテッドなサイト構築に取り組むことでオーガニックによる集客を行い、収益力を高める方針だ。特に「塾シル」を中心に強化する考えで、サイトの品質向上のための人材投資を積極的に行い、体制を強化する。有料掲載教室数については1.1万教室と当初目標の1万教室を超過し、大手学習塾などの顧客獲得も進んだことから今後はコンテンツの強化に軸足を移していく。「塾シル」の特徴は、保護者や生徒の知りたい情報が競合のポータルサイトと比較して充実している点にある。送客ルートは資料請求、体験授業、電話と3つのルートがあるが、なかでも体験授業の申し込みと電話の問い合わせが多く、結果的に送客に対する入塾率の割合が35~50%と競合サイトに比べて高い点が強みとなっている。このためオーガニックによってサイトへの集客を増やすことができれば、収益化が見えてくるため、今後の動向が注目される。そのほか、シナジーが見込めるメディアについてはM&Aで取得していくことも検討している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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