サーラ Research Memo(7):非エネルギー分野を伸ばし“暮らしのSALA”の確立を目指す
*13:07JST サーラ Research Memo(7):非エネルギー分野を伸ばし“暮らしのSALA”の確立を目指す
■成長戦略・トピック
1. 2030年ビジョンと第5次中期経営計画(2023年11月期~2025年11月期)
サーラコーポレーション<2734>では、2030年ビジョンとして「私のまちにSALA、暮らしとともにSALA」を掲げ、その実現を目指している。目指す姿として、1) SALAブランドの確立、2) 質の向上、3) 住まい分野の飛躍的成長、4) 自ら考え、行動する人づくり、5) 社会価値向上の5つを定めた。エネルギー領域を主力として成長してきた同社であるが、2030年ビジョンでは、非エネルギー事業の領域(住まいやエンジニアリング分野など)を伸ばしつつ、事業ユニットの枠を越えた総合力を発揮し、暮らしの新しい価値を提供する戦略を明確にしている。数値目標としては、2030年11月期に売上高で2,800億円、営業利益で120億円を目指す。この目標数値は、2024年11月期の実績と比較すると、売上高で1.16倍、営業利益で1.90倍となる。2024年12月の安江工務店の連結子会社化により、住まい分野の成長が加速すれば売上高2,800億円は射程に入る。利益面でも、安江工務店の子会社化により既存のリフォーム事業(売上高105億円)に加え、ハウジングセグメント、プロパティセグメントとのシナジーを追求することで一段の利益成長を目指している。また、BtoB分野では、工場や病院等のエネルギー事業の顧客基盤を活用して、エンジニアリング&メンテナンス事業の設備工事やメンテナンス工事を伸ばしている。今後、セグメントの枠を越えた連携・共創が進めば一段の成長を期待できそうだ。
2. 成長投資の進捗
第5次中期経営計画では、事業変革と新しい価値の創造を実現するため、3年間累計で150億円の積極的な成長投資を計画した。2年目を終了した時点で累計111億円の投資を完了し、3年目に入って安江工務店のM&Aで約40億円の投資を実行するなど順調に進捗している。最大の投資は「カーボンニュートラルの実現、新分野への投資」であり、累計64億円を投資した。電力ビジネスへの展開(系統用蓄電所など)や省エネ、カーボンニュートラル化に向けた設備が主な投資対象である。「DX投資」には累計約25億円を投資した。DXにより、業務プロセスを抜本的に改革し、期待を上回る顧客体験を提供するのが狙いである。2025年11月期にはグループ新基幹システムの稼働が予定されている。「人的資本投資」には、多様な人材が自ら考えチャレンジし、活躍できる働き方や仕組みを導入するために約14億円を投資した。「業務資本提携M&A投資等」には2年累計で約7億円の投資を実施しており、3年目には安江工務店を連結子会社化した。今後も、アライアンス、M&A、事業承継、ベンチャーキャピタルファンドやスタートアップへの出資など様々な手法で新事業を確立させる考えだ。
3. 安江工務店の子会社化
同社は、安江工務店の株券等に対する公開買付け(2024年11月8日〜2024年12月19日)を行い、2024年12月26日に決済を行い連結子会社化、2025年2月にスクイーズアウトにより完全子会社化した。安江工務店は1970年創業の新築住宅及び住宅リフォームを営む企業であり、2000年からは住宅リフォーム事業を中心に成長し、上場を果たした。2024年12月期の売上高は8,082百万円、営業利益は340百万円、純資産は2,588百万円である。売上構成比の80%以上を占める住宅リフォーム事業では、戸建住宅やマンション等の網戸の張り替えやメンテナンスなどから、自然素材を使用したデザイン性の高いリフォーム・リノベーションや増改築に至るまで、幅広い価格帯や客層に対応した総合的なサービスを提供している。そのほか、新築住宅事業と不動産流通事業も行う。愛知県・岐阜県を主要エリアとして事業を展開し、地域に密着した店舗展開をしてきた結果、受注件数のうち50%以上がOB顧客(過去に契約した顧客)からのリピート注文となっている。同社と安江工務店の両社は隣接する地域でリフォームを中心とした住宅関連事業を営んでおり相互補完の関係にあり、「地域」と「顧客(OB顧客)」とのつながりと信頼を大事にして事業拡大を目指すという点で経営理念や価値観が近い。このようなことから、双方の顧客基盤等を活用し、ともに業績と業容を拡大する可能性を協議するに至った。シナジー創出のためには完全子会社化を通じた迅速かつ機動的な統合が必要であり、東証スタンダート市場及び名証メイン市場に上場していたことから、公開買い付けとなった経緯がある。安江工務店は約80億円の売上規模であり、同社の住まい、暮らしの事業領域の新たな柱となることが期待される。
4. 資本コストや株価を意識した経営
同社は、PBRの改善を重要な経営課題と認識し、取締役会や指名・報酬委員会での議論を重ね矢継ぎ早に対策を打ち出している。
長年にわたり利益体質が定着しているため、利益が積み上がり、自己資本が増加したことに伴い、ROEは伸び悩みの傾向にある。2024年11月期末のROEは前期末比1.7ポイント低下の6.5%である。今後はROEを向上すべく資本効率の向上を目指し、積極的な成長投資及び財務戦略を実行し、2030年までにROE10%以上を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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