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銘柄/投資戦略 2019/09/26 15:11 一覧へ

きちりHD Research Memo(1):「立地×業態」の二次元成長からFood Tech戦略を加えた三次元成長へ

■要約

きちりホールディングス<3082>は、自社開発した「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」等の業態を展開する飲食事業のほか、様々な分野の有力ブランド・コンテンツホルダーと協業した店舗のプロデュースや、自社グループで店舗の業務効率向上のため活用しているITプラットフォームを同業他社に提供するプラットフォームシェアリング事業(以下、PFS事業)を展開している。店舗数は2019年6月末で全26業態、95店舗(前期末比2店舗増)となっており、主に首都圏、関西圏を中心に出店している。2019年1月より機動性を持たせた事業運営を行うため、持株会社制に移行している。

1.2019年6月期は既存店売上が堅調に推移し増収増益に
2019年6月期の連結業績は、前期の単独業績と比較して売上高が7.3%増の9,914百万円、営業利益が13.4%増の406百万円と増収増益となり、会社計画(売上高9,800百万円、営業利益400百万円)に対しても若干上回って着地した。新規出店は4店舗と期初目標の10店舗に届かなかったものの、既存店売上高が前期比1.3%増と計画(2.0%減)を上回って推移したほか、2018年4月に大阪の商業施設「ルクア大阪」内に出店したグローサラント業態のイタリアンフードマーケット「Merca(メルカ)」が年度を通じて順調に推移したことが増収増益要因となった。

※グローサラントとは、「grocery(グロッサリー、食材販売店)」と「restaurant(レストラン)」を組み合わせた造語。


2. 2020年6月期はFC展開も積極化
2020年6月期は売上高で前期比6.4%増の10,550百万円、営業利益で同10.8%増の450百万円と増収増益基調が続く見通し。既存店売上の前提は前期比2.0%減とし、新規出店は直営で10店舗、FCで10店舗を見込んでいる。FC展開については、2018年5月より開始した「いしがまやハンバーグ」業態に加えて、国内外の企業から様々なオファーが来ており、順次立ち上げていく予定となっている。一方、直営店舗については2019年8月末時点で3業態、3店舗の新規出店を行うなど順調な立ち上がりを見せている。また、松竹<9601>とJホラー(ジャパニーズホラー)を国内外で発信すべく、2019年6月より共同事業を展開しており、今期はインドネシアで人気の高い「VRお化け屋敷」を出店する予定となっている。香港では2019年3月に高級スーパーを運営するCity Super Ltd.と「Foodie Wonderland(City Superブランドに基づく、生鮮物販と飲食を融合させた新業態)」事業の発展に向けた店舗設計及び運営ノウハウの提供を行っていく。

3. 成長戦略
同社は「ライフスタイルの多様化」「市場規模の縮小」「人材不足」の3つの環境変化によって、外食業界も生存競争が今まで以上に厳しくなると見ている。こうしたなかで従来の2次元(立地×業態)の拡大による事業成長に、独自のFood tech戦略を加えた次世代型ビジネスモデルを構築することにより、さらなる成長を目指している。主には、独自の強みである業態開発力を生かしたFC展開による「オープン&クローズ戦略」、グローサラント事業やエンターテイメントとの融合による「Food Experience(食体験)戦略」、店舗の生産性向上を実現する各種ITサービスをベンチャー企業との資本業務提携や自社開発で展開する「オープンイノベーション戦略」の3つの戦略を推進していく。ITサービスでは子会社で開発した「ApplyNow」が注目される。アルバイトの採用プロセスを大幅に効率化するSaaS型サービスで、応募者から送られてきた動画内容や記述内容のチェックで採否を判断するWeb面接システムとなる。応募者にとっても面接に出向く必要が無くなるためメリットが大きい。2018年10月にリリースして以降、グループ店舗だけでなく大手外食チェーン、アパレル会社、人材派遣会社等、20社以上の企業に導入されており、今後成長が期待できるサービスとして注目される。

■Key Points
・業態開発力と人材採用・育成力に加えて、ITを店舗運営に積極的に活かす先進性が強み
・2020年6月期は新規出店効果で2ケタ増益が続く見通し
・フランチャイズ展開やITサービスの育成による次世代ビジネスモデル構築で成長を加速する

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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