澁澤倉庫 Research Memo(5):内外ロジスティクスなど物流事業と不動産事業を展開(3)
*16:55JST 澁澤倉庫 Research Memo(5):内外ロジスティクスなど物流事業と不動産事業を展開(3)
■事業概要
(3) 情報システム
大量で複雑な物流をオペレーションする際、高度な情報システムは大きな差別化要因となる。澁澤倉庫<9304>は、倉庫管理システム(WMS)、輸出入荷捌き・航空貨物システム、陸運配車システム、飲料専用WMSの4つのシステムを統合しプラットフォーム化した高度な総合物流システムを有しており、陸・海・空ワンストップの総合物流サービスを提供することができる。顧客の様々な物流特性や多様な要望、特殊な仕様に対して柔軟に対応することで、それぞれの輸送モードや貨物管理に最適なシステムを提供している。
倉庫管理システムは、食品や日用品の日付管理や通常在庫とECサイト用在庫の一元管理など、商品特性ごとに最適化されたシステムで、迅速確実かつ効率的に在庫管理を行うことができる。また、モバイル端末などを活用することで作業の効率化、低コスト化を実現している。顧客向けには、Webサービスによるリアルタイム在庫照会やダウンロード、各種EDI連携といった機能を標準で備えている。輸出入荷捌き・航空貨物システムは、NVOCC・海貨・航空貨物・通関業務の各システムをシームレスに統合したシステムで、NACCS※とも連携している。顧客の輸出入に関わる情報や進捗状況をリアルタイムで共有できるため、迅速で一元的なサービスの提供ができる。またWebサービスにより、許可データなどNACCS実績情報や各種トレース情報の提供もできる。陸運配車システムでは、全国の配車情報を一括管理して無駄のない効率的な車両運行を行うことで、競争力のある運賃を提示できる。さらに、貨物トレースシステム・GPS機能・自動配車システムなど最新機能と連携することで、顧客ニーズに即した高品質なサービスを提供している。
※NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System):船舶・航空機の入出港や貨物の輸出入について、税関そのほかの関係行政機関の手続や民間業務をオンラインで処理するシステム。
(4) 物流事業を支える関連会社
大量で複雑な物流をサポートしているのがグループ会社である。倉庫業務は、寄託を受けた貨物の倉庫保管、庫入・庫出作業及びこれに伴う流通加工などの荷役で、同社と大宮通運、北海澁澤物流、平和みらいなどが行っている。また、荷役業務については九州澁澤物流(株)などにも委託している。港湾運送業務は、港湾における船内荷役、沿岸荷役、はしけ運送、上屋保管及びこれらに伴う荷捌きを行う業務であり、同社及び門司港運送(株)が行っている。陸上運送業務は、貨物自動車運送及び引越などのサービスを行う業務であり、実作業・実運送は澁澤陸運(株)、日正運輸などが担っている。なお、日正運輸はフェリー輸送、大宮通運は鉄道輸送も事業の柱としている。国際輸送業務は、国際一貫輸送、国際航空貨物運送、これらに伴う荷捌きを行う業務であり、海外において澁澤(香港)有限公司、Shibusawa Logistics Vietnam、澁澤物流(上海)有限公司などが展開している。その他の物流業務は物流施設賃貸業務、通運業務などで、同社や大宮通運などが行っている。子会社は、同社のサポートを担うばかりでなく、独自の営業も行っている。
(5) 不動産事業
同社は長年好立地で倉庫業を営んできた。施設のなかには時代の変化とともに周辺が宅地化・都市化され、不動産としての価値が高まる一方、物流での使用に適さなくなるものも出ている。不動産事業は、そうした物件を有効利用するため、オフィスビルや物流施設、高付加価値物流施設に再開発して賃貸することを進めており、現在では多数の賃貸ビルを擁す安定収益源となっている。代表的な賃貸オフィスビルには、東京地区に澁澤シティプレイス(茅場町)や澁澤シティプレイス永代、澁澤ビル、澁澤シティプレイス蛎殻町、関西地区にドーミー三宮などがある。今後は、CRE戦略推進の加速や環境対応のバリューアップ投資により収益性を向上させ、物流との融合による新たな価値を創造していくとともに、再開発事業への取組みもも検討している。グループ会社の澁澤ファシリティーズ(株)では、各種法令や設備の専門知識を有するプロフェッショナルなスタッフが、工事・ビルマネジメントサービスに取り組んでいる。ビルの管理では設備管理から警備、清掃、環境衛生管理に至るまでのマネジメントサービスのほか、同社が運営する施設の診断や補強、更新の際には建設工事や設備工事、内装工事など各種工事も請け負っており、利用するすべての人々に快適で安全・安心な職場環境を提供している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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