トヨクモ Research Memo(1):トヨクモクラウドコネクト(株)を通じた自治体等への本格参入で成長加速狙う
*16:21JST トヨクモ Research Memo(1):トヨクモクラウドコネクト(株)を通じた自治体等への本格参入で成長加速狙う
■要約
トヨクモ<4058>は法人向けのクラウドサービスを提供するSaaS(Softwere as a Service)企業である。安否確認サービスやサイボウズ<4776>の「kintone(キントーン)」に連携するクラウドサービス、日程調整が簡単に行えるグループスケジューラー等の提供を行っている。
1. 2023年12月期の業績概要
2023年12月期業績(非連結)は、売上高で前期比25.7%増の2,434百万円、営業利益で同36.9%増の875百万円、経常利益で同37.0%増の875百万円、当期純利益で同47.9%増の631百万円となった。同社は2023年2月に期初計画として売上高2,330百万円、営業利益720百万円を提示したが、2023年11月の第3四半期決算発表時に、これを売上高2,430百万円、営業利益840百万円へと上方修正し、おおむね上方修正計画に沿った着地となった。売上高としては、安否確認サービス、kintone連携サービスがともに良好に推移した。営業利益は、上方修正比で上振れとなった。同社の想定より売上高が伸長したことに加え、人件費において一部採用が未達となったことが影響した。なお、同社の売上高の99.3%がストック売上であり、KPIの1つである有償契約数は順調に拡大基調を続けていることから、今後も売上高、営業利益ともに右肩上がりでの推移が見込めるだろう。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の業績見通しは、売上高で前期比20.8%増の2,940百万円、売上総利益で同20.8%増の2,870百万円、営業利益で同14.3%増の1,000百万円、経常利益で同14.3%増の1,000百万円、当期純利益で同9.3%増の690百万円である。売上高については、「安否確認サービス」と「kintone連携サービス」の有償契約数の伸長が引き続き見込まれる。売上総利益率は前期の97.6%と同水準、営業利益率は前期の35.9%に対して34.0%と若干低下する見通しだが、これは社員数を2023年12月末の57名から2024年12月末までに72名、前年比26.3%増を計画していること、また、積極的に平均賃金の引き上げを進めていることなどが影響している。同社では高い売上成長を持続しながら、中長期的に営業利益率30%以上を継続すべく、売上比率で30%を目途とした人件費及び営業利益率30%を意識した規律ある広告投資計画を両立する計画である。また、同社では期初計画をやや保守的に発表する傾向が強く、2022年12月期、2023年12月期ともに第3四半期決算発表時に通期業績予想の上方修正を発表している。直近までの月次売上推移を見ても計画比で順調に上振れ基調で進捗していると推察されよう。
3. 中期成長戦略
同社は、IT初心者においても簡単でシンプルで分かりやすいサービスを提供する「ITの大衆化」の実現を目指している。現在のクラウド型のビジネスモデルを突き詰め、磨き続けることで、中期的に大きく成長していく戦略である。安否確認サービスは、従前からの使い方である自社従業員に対して行うものに加え、企業が災害時に事業活動の継続を検討するために、取引先も含めたサプライチェーン全体で利用を広げていく。kintone連携サービスについては、引き続きクロスセルによる顧客当たりの売上単価の向上を進める。新サービスの「トヨクモ スケジューラー」については、国内だけでなく海外への展開も狙ったサービスとして位置付けており、今後の展開が注目される。2023年11月には、子会社として、クラウドベースでkintone等のSaaSを組み合わせたパッケージを、迅速・安価に開発・提供するトヨクモクラウドコネクト(株)を設立。これにより、市場が急拡大している行政DXやエンタープライズ領域など、これまで同社が未開拓だった領域への参入で成長がさらに加速することが期待される。
■Key Points
・簡単・シンプル・分かりやすい法人向けクラウドサービスを提供、ITの大衆化の実現を目指す
・2024年12月期も、利益を確保しつつ、人材採用の加速、平均賃金の継続的な引き上げを行う計画。また、自治体、エンタープライズ向けビジネスに本格参入へ
・KPIとして有償契約数・チャーンレート・LTVを重要視、高いストック売上比率と間接費を抑えた事業運営で、高い利益成長は続く
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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